「”MBAは役立たず”というウソが出回る理由」

最近忙しくてなかなか本サイトを更新できないkumatoronics21です。忙しい理由は別途ご説明の機会を設けさせていただくとして・・・・

2018年6月6日、PRESIDENT Onlineに「”MBAは役立たず”というウソが出回る理由」という記事が掲載されました。

記事の内容

筆者の加登先生は、以下MBA批判をするむきは以下2冊の書籍を読んでほしいとしています。

  • 遠藤功『結論を言おう、日本人にMBAはいらない』(角川新書、2016年)
  • H.ミンツバーグ著・池村千秋訳『MBAが会社を滅ぼす:マネジャーの正しい育て方Managers not MBAs』(日経BP社、2006年)

いずれも以前の私の記事『日本人にMBAは必要ない?』『「MBAが会社を滅ぼす」は本当か』で取り上げた本です。加登先生は、両者ともマネジメント教育そのものを否定しているのではなく、現行とは異なるもっと良い教育があるのでは?と主張している、としています。そして、経営系大学院の長所を理解してほしい、と主張しています。

そもそも教育ってなんでしょう?

本日この記事を書こうと思った理由は、昨日こんな記事を見たからです。

「僕みたいなトンガリ育てる」 永守氏が大学に託す夢

2018年6月24日のNIKKEI STYLEの記事です。「永守氏」とは、日本電産会長の永守さんです。永守さんは2018年に京都学園大学を経営する学校法人京都学園の理事長に就任されました。

記事によると永守さんは、次のように述べています。

大学は出たけれど、実務は何もできません、英語も話せません、専門知識もありませんでは、大学でいったい何を学んできたのかということになる。大学進学者が今よりはるかに少なかった数十年前なら、教養中心のカリキュラムにも意義はあったかもしれません。しかし、高校卒業生の半分が大学に進学する現在、大学の役割も大きく変わって当然です。社会に出て即戦力となるような人材を育てることこそ、大学に求められているのではないでしょうか。

現行とは異なる教育が必要だという文脈が、前述の遠藤先生、ミンツバーグと似ていませんか?

永守さんよりもっと極端なのが、冨山和彦さんの「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」です。冨山さんは、例えばL型大学の経済・経営学部では、マイケルポーターや戦略論ではなく、弥生会計ソフトの使い方を教えるべきだ、としています。

現行とは異なる教育が必要、としているのは4者とも一致しています。ただ、4者―加登先生も含めて5者―とも、主張する教育の方向性はバラバラです。

どの船に乗るか?より大切なこと

「”MBAは役立たず”というウソ」が本当か嘘か。理論と実践どちらが大切か、ポーターと弥生会計のどちらが必要か。

さらにこんな主張もあります。経営学者(組織行動論)のジェフリー・フェッファーは寄稿[1]の中で「新しいとうたわれていたらとにかく疑え」「中途半端な真実に警戒せよ」と述べています。「新」と「旧」、「真実」と「嘘」と区分されたものでも、すぐに片方に飛びつくな、としているのです。

どの船が沈没せず目的地までたどりつけるか、だれにもわかりません。しかし、少なくとも船に乗るのであれば、全力で乗って、全力で漕がないと、いつまでたっても目的地にたどり着かないのではないでしょうか。それは、その船に乗るか、ということよりもよっぽど大切なことかもしれません。あなたの船の選択は、正解かどうかだれにもわからず、だれかが責任をとってくれるわけでもないのです。

えっ?泳いで行く?まあ場合によって、アリなんじゃないでしょうか(笑)

[1]ジェフリー・フェッファー:「経営論を鵜呑みにしてはならない」,ダイアモンド・ハーバード・ビジネスレビュー (2005/6).