【その6】これ本当?『国内MBAの半分は定員割れの「限界スクール」。 法科大学院に続き淘汰の波』

【その5】これ本当?『国内MBAの半分は定員割れの「限界スクール」。 法科大学院に続き淘汰の波』の続きです。

引き続き「(MBAには)法科大学院に続き淘汰の波」が来ているかどうか調べてみましょう。今回はGoogleトレンドの数字を使ってみます。Googleトレンドは、一定期間ごとの指定したキーワードの検索数を教えてくれるWebサービスです。

対象期間を2013/1/6~2018/1/10の約5年間、対象国を日本として、「MBA」と「法科大学院」の検索数の推移を調べました。ただ、この2つだけではどう評価していいのかわからないので、似たようなトレンドを示していた「湘南新宿ライン」の検索数を参考として併せて以下の図に示します。

Googleトレンドは検索数そのものなので、良くも悪くも話題になると数字が跳ね上がます。グラフで茶色のMBAの線が2016年3月頃に飛び上がっていますが、これはショーン・KがハーバードMBA卒の学歴詐称が発覚した時期と一致します。また、水色の法科大学院の線が2015年8月ごろに跳ね上がっていますが、これは明大教授が司法試験問題を漏えいした時期と一致します。このようにメディアで話題になるとそれにひっぱられて検索数が跳ね上がります。

「法科大学院」は募集停止が話題になるたびにちょっと上がってますね。「MBA」「法科大学院」ともに、全体的にゆっくりと右肩下がりになっています。両方ともブームが落ち着いてきたということでしょうね。

ちなみに・・・

参考までに、灰色の点線で「湘南新宿ライン」を載せています。「湘南新宿ライン」を選んだ理由は特にありません。「MBA」と「法科大学院」似たような傾向を示すキーワードを色々さがしていた中でたまたま見つかっただけです。ちなみに湘南新宿ラインとは、関東地方に走っているJR線の名前です。2014年2月に跳ね上がっているのは、ちょうどその頃首都圏に記録的な量の雪が降った影響だと思われます。同じく2017年10月の跳ね上がりは、宇都宮線内の送電設備故障による運休の影響だと思われます。

「湘南新宿ライン」の5年間の推移をみると、全体的にゆっくりと右肩下がりになっています。

あまり含意はなさそうです

「(MBAには)法科大学院に続き淘汰の波」が来ているかどうか調べるために、「法科大学院」と「MBA」についてGoogleトレンドを用いて検索数の推移を確認しました。両方とも同じように右肩下がりとなっており、「MBA」は「法科大学院」と類似したトレンドになっていました。これだけ見ると、MBAは淘汰されつづけている法科大学院と同じ道をたどっているようにも思えます。しかし、「湘南新宿ライン」も同じようなトレンドになっています。湘南新宿ラインはここ数年増発も減便もなく、現在も首都圏鉄道網の一角を担っています。よって、右肩下がりは「淘汰の波」とは関係なさそうです。

テクニカル分析とファンダメンタル分析

ところで、株価分析には大きく2つの方法があります。1つは過去の時系列データを数理的に扱うテクニカル分析、もう1つは企業の推進する事業などから本質的価値を扱うファンダメンタル分析です。このシリーズでは、国内MBAの半分は定員割れの「限界スクール」かどうか、国内MBAは法科大学院に続き淘汰の波がきているかどうか、の2点について、主にテクニカル分析的な方法を用いて調査してきました。しかし、どうやら国内MBAの動向をテクニカル分析的な方法だけで調べるのは限界がありそうです。理由は、公開されているデータが乏しい、歴史が浅いため時系列データが少ない、マーケットの規模が他の教育産業と比較して小さくサンプル数が少ないためであると考えます。

ポジショニングアプローチとリソースベースドビュー

となると、経営戦略の王道であるポジショニングアプローチとリソースベースドビューで分析をするべきですが、大学院に株式公開があるわけでもなく投資家への説明責任もないため、情報の入手が困難です。

(最終回【その7(完)】これ本当?『国内MBAの半分は定員割れの「限界スクール」。 法科大学院に続き淘汰の波』につづく)