国内MBA受験専門予備校が考えるビジネススクール入学に必要なもの

2018/1/302018/2/1国内MBA受験専門予備校NIKKEN MBA lab.の波田野さんが、考える力に関する記事をご自身のブログに投稿されました。

波田野さんの考えるビジネススクールが求めている力

波田野さんは、受講生に考える力が不足している点が見られ、その原因は日本企業の体質にある、としています。日本企業では業務が標準化され、自分の意見を言うことはご法度であり、それが組織特殊的な人材を生み出している。その上で、ビジネススクールが求めている考える力とは、自分の意見を持つことと、理論的に説明できる能力である、としています。(ざっくりとした要約です)。

なるほど、私は受験予備校に通ったことがないのでわかりませんが、たくさんの受験生と接している方ならではのリアルなご意見だと思います。自分の意見を持つことと、理論的に説明できる能力。これらが重要であるならばそれこそビジネススクールでみっちり勉強して身につけるべきです。事実、ケースメソッドはこれらを醸成する有効な手立ての一つです。ではビジネススクールが入学前にこれらを求めているということはどういうことでしょう?おそらく、一朝一夕には身につかないから、少なくともその素養を持っている人を入学させたいのではないでしょうか。

突然ですが、話は義務教育まで飛びます。

OECD加盟国の多くで義務教育の終了段階にある15歳の生徒を対象に、読解力などを調査するPISAという国際的なプログラムがあります。2003年のPISA調査で、日本の「読解力」はOECD平均まで低下していることがわかりました。これを受けて文科省は、2005年に読解力向上プログラムというものを推進しました。内容は「特に文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力」の醸成を重視するものです。その甲斐あってか、2009年以降の同調査では35か国中1位~6位と、上位に位置するようになりました。

ということは、教育の力で「自分の考えを持ち論理的に意見を述べる能力」は伸ばせるのかもしれません。問題は15歳でなく、30代~40代の「組織特殊的」なビジネスパーソンがいまからこれらを身につけられるかです。

ラベルつけて出荷するだけ!?

ミンツバーグは自著の中で、ビジネススクールの役割はワインのボトルにラベルを付けて世に送ることだ、という関係者の発言を取り上げています。既にできあがったおいしいワインを入荷して、〇〇産●●年ものというラベルを付ければ、価値が跳ね上がって高く売れるという意味です。もちろんこれは海外の有名MBAの話で、国内MBAではラベルの効力はほとんどないのが実状です。

一朝一夕には身につかない、義務教育で身につけるべきとされる「自分の意見を持つことと、理論的に説明できる能力」。これらをがんばって身につけてビジネススクールに入り、学習と研究を重ね、それほどブランド力のないラベルを張られて修了する。受験生のみなさん、それでも国内ビジネススクールに入りたい理由があるのですよね?波田野さんはそれを問うているのではないのでしょうか?そのヒントは、本ブログの中に散りばめられているかもしれません。

参考:「MBAが会社を滅ぼす」は本当か

ちなみに・・・

波田野さんはブログの中で、数学を方程式にあてはめてただ一つの正解を求める学問のように述べていますが、これは明確に誤認識であることだけは主張させていただきます。

参考文献

国内MBA受験専門予備校NIKKEN MBA lab.
文部科学省:読解力向上プログラム  (2005).
文部科学省:OECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)のポイント.
ヘンリー・ミンツバーグ:MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方 (2006).