会社で役に立っているのか~修士1年を終えて3~

会社で役に立っているのか

顕在的な役立ち方と潜在的な役立ち方に大別します。

顕在的な役立ち方

顕在的な役立ち方は、ビジネススクールで得た個別の知識が役に立つ場面です。例えば、今在職している会社はちょっとした社外研修があるのですが、松尾(2013)によるとOFF-JTが能力開発に占める割合は10%と言われています。社外研修を充実させるより前に、もっとエンゲージメントの向上や、組織市民行動の拡大、組織が持っている基礎前提(basic assumption)の変革など、人材開発や組織開発としてやるべきことがたくさんあると思っています。そのことを大規模な従業員サーベイを行うべきだと、出典とともに人事に伝えました。後に返事が来て、早速来年度の実施するとのことでした。

また、私が所属している組織では属人的に知識が保持されていることに問題を抱えていました。そこで、情報共有を促すシステムを構築して、全員に登録のノルマを課しましたが、なかなかみんな登録してくれません。登録数上位者には図書券をプレゼントする、なんて報酬も用意しましたが、あまり効果がありませんでした。そもそも情報共有するメリットがなかったのです。そこで、情報共有システムのバージョンアップに併せて、社内勉強会を開き、有能性の罠、組織学習、認知的限界、シナジー効果というキーワードを交えて如何に情報共有が競争優位性を生み出す源泉となるか説明をしました。割と評判がよかったみたいで、単に掛け声あげるより納得感があったようで、登録数は増えました。

あとは、なぜ自社の個人PCのリース期間が2年から3年なのかとか、自社は一般的な日本企業に比べ利益率が高いとか、そのぐらいはわかるようになりました。
他にも挙げるといろいろありますが、ここまでにしておきます。
このように自分の専門にとらわれない様々な知識を得られたことで、直接的に役立ったことが結構ありました。

潜在的な役立ち方

潜在的な役立ち方は、俯瞰的な視点と考える力です。なぜこんなことが起こっているだろうとか、これはどうすればいいんだろうとかなど、課題がなにかもわからない事象やそれを踏まえた意思決定において、経営に関するいろいろな知識を組み合わせて枠組み、世の中の情勢を踏まえつつ、物事を考えられるようになりました。あと、物事にはいい面だけでなく悪い面もあること、まだこの世にはわからないことがたくさんあること、実は何も考えていない人が世の中には結構いること、他の部署や他社の立場ならどう考えるかなど、多面的に捉えられるようになりました。ただこれらの能力は水や空気のようなもので、なかなか効果を実感できないものです。なので、どう役に立っているかはなかなか説明しづらいところではありますが、俯瞰的な視点と物事を考える力は向上したのは肌感覚で実感できます。

顕在的な役立ち方と潜在的な役立ち方、どちらもビジネススクールの講義だけでなく、ケーススタディ、ディスカッション、グループワークなど、同級生からも得られた成果です。

参考文献

松尾睦(2013)「育て上手のマネージャーの指導方法-若手社員の問題行動とOJT」『日本労働研究雑誌』No.639, pp.40-53.